お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

三十分後、ノックの音とともに、病室の前に立っていた父付きの警護官が静かに扉を開けた。

「橘警護官が到着しました」

「入ってもらって」
父がそう言うと、緊張した面持ちで橘航太が姿を現した。

紗良の姿を目にした瞬間、彼は眉を深く寄せ、戸口に立ったまま深く頭を下げた。
そしてまるで土下座でもしそうな勢いで前に出ながら、

「この度は、私の不手際で……っ」

その言葉を最後まで言わせる前に、父が素早く手を上げて制した。

「いやいや、そんなことをさせるために呼んだんじゃない。ほら、座ってくれ」
そう言って、ベッドサイドの椅子を指さす。

予想外の展開に、橘はきょとんとした顔になる。まるで怒られる覚悟でここへ来たら、いきなり拍子抜けしてしまった、そんな表情だった。

「い、いえ……一ノ瀬大臣がお座りに……」

「いいからいいから、娘が君と話したいって言うから呼んだんだよ」
父はにこやかにそう言いながら、橘の肩を押すようにして椅子に座らせた。

そのやり取りがまるで漫才のようで、思わず紗良はふっと吹き出した。
父の後ろに控えていた警護官も、肩を揺らして苦笑いを浮かべる。

「今日は警護中じゃないんだから、普通に娘と話してやってくれ」
父は念を押すように橘にそう言うと、自分の警護官に軽くジェスチャーを送った。

警護官は静かに一礼し、部屋の外へと退室した。

扉が閉まると、部屋には柔らかな静けさが満ちた。
そして、これから交わされるであろう言葉の重みだけが、残された。