お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

父は、病室のドア付近に控えていた自身の警護官に視線を送った。

「橘くん、今呼べるか?」

警護官は即座に一歩前に出ると、落ち着いた声で答える。

「先ほど、公安部による事情聴取が終了したとの連絡がありました。明日から現場復帰の予定ですが……今、お呼びしましょうか?」

父は少しだけ顎に手を添えて考え込んだ。
そして、ゆっくりと首を振った。

「いや、警護に入ってほしいわけじゃない。ただ……少し、三人で話がしたいんだ」

警護官はすぐに深く頷く。
「確認いたします。すぐにご連絡しますので、少々お時間を」

そのやりとりを聞いていた紗良は、枕元で小さくため息をついた。
「……わざわざ呼ばなくてもいいよ。橘さん、きっとまだ疲れてる」

だが父は、口元に薄い笑みを浮かべて言った。

「思い立ったが吉日、だろう?」

まるで昔の口癖のように、軽やかに。

警護官は軽く会釈し、病室の外へと出ていった。

――五分後。早足で戻ってきた警護官が、柔らかい声で報告する。

「三十分後にこちらへ到着する予定です」

父は背筋を伸ばして立ち上がり、丁寧に頭を下げる。

「ありがとう。手間をかけさせてすまない。感謝するよ」

その一連のやりとりをじっと見つめていた紗良は、ベッドの中で思わず内心で呟いた。

(……もっと横柄にしてるのかと思ってた)

それは、どこかくすぐったく、知らなかった父の一面だった。