お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

控室に駆け込むと、扉が内側から閉められた。
音が一気に遮断され、そこだけが時間から切り離されたように静まり返る。

紗良は橘と松浦に支えられたまま、浅い呼吸を繰り返していた。

「……横にしましょう。楽にして」

橘の落ち着いた声に、松浦がうなずき、二人で紗良を控室のソファへとそっと移動させる。

「足、ゆっくり、そう……はい、座って……そのまま、倒れましょう」

背中を支えられながら横になると、紗良の視界がわずかに傾いた。

でもそれ以上に──目に映った自分の血に、呼吸が一気に乱れる。

「……っ……っ、あれ、……血……出て……!」

「見なくていい、見ないで。こっちを見てください」

松浦がすぐに紗良の視線を遮り、橘が片手でシャツの隙間にハンカチを差し入れて押さえながら、
もう片手で彼女の額を優しく撫でた。

「呼吸が浅くなってます。吸って──吐いて──そう。大丈夫です、もう安全です」

「……息……できない、なんか、……苦しくて……!」

肩が震え、手は冷たく、唇がわずかに青ざめていく。

「大丈夫、これは過呼吸です。酸素は足りてます。少しだけ目を閉じて、声を聞いて──私の声に集中して」

橘が低く、ゆっくりした調子で語りかける。

「一緒に息を整えましょう。吸って──せーの、吐いて。はい、もう一度……吸って──」

松浦は紗良の手を握ったまま、ゆっくり上下に動かす。

「この動き、まねして。ゆっくり、ゆっくり……そう、それでいいです」

やがて、紗良の呼吸は少しずつ戻っていく。
目の焦点が合いはじめ、視線が橘と松浦を交互に追った。

「……ごめんなさい……私、しっかりしなきゃって……思ってたのに……」

「謝ることじゃない。襲われて、平気な人なんていません」

橘の言葉に、松浦もうなずいた。

「あなたが無事だった、それがすべてです」

どこか現実感のない空気の中で、それだけは確かだった。
紗良の体からじわじわと緊張が解けていく

松浦は立ち上がると、すぐに備品棚から小さなブランケットを取り、紗良の身体に掛ける。