カメラを持った男が、するりと記者席から立ち上がった。
三枝は息を整えた。
社長が壇上でスピーチを始めていた。
視線が舞台に集中している今が、最も死角が生まれる瞬間だった。
目は冷たく一点を射抜くように、紗良を見据えている。
胸には「ゴシップジャパン」の記者証。
彼のバッグの底には、金属音ひとつ立てないよう包まれたアイスピック。
すっと、紗良の座る関係者席の後ろへと歩み寄る。
あと数歩。
手の中で冷たい凶器を握り直した──その瞬間だった。
「下がってください!」
橘の声が鋭く響き、同時に松浦が紗良の腕をとり庇うように前へ出る。
橘は逆側から紗良の肩を抱き、強く引き寄せた。
だが──
「っ、痛っ!」
ヒールが床を滑り、紗良はよろめいて足首をひねった。
体が倒れかけた一瞬、三枝の腕が横から伸びる。
振り下ろされたアイスピックの先が、
松浦と橘の動きに遅れて、一瞬だけ露わになった紗良の左肩にかすめる。
「──ッ!」
冷たい痛みとともに、シャツの肩口が破れ、赤い筋が滲む。
直後、
「動くな!」
旗野が怒声とともに突進し、男を取り押さえる。
カメラが落ちて床を転がる音、もみ合う音、周囲の悲鳴。
橘と松浦は倒れかけた紗良を両側から支え、
そのまま引きずるように会場の通路へと飛び出す。
控室までのわずかな距離が、永遠にも感じられた。
紗良は肩の痛みと足の感覚に耐えながら、橘の背中を強く握る。
「しっかり……!」
松浦の声と共に、扉が閉まった。
静寂が戻った控室で、
松浦がすぐさま紗良の肩の傷に目をやる。
浅い切り傷。けれど、確かに血が滲んでいた。
三枝は息を整えた。
社長が壇上でスピーチを始めていた。
視線が舞台に集中している今が、最も死角が生まれる瞬間だった。
目は冷たく一点を射抜くように、紗良を見据えている。
胸には「ゴシップジャパン」の記者証。
彼のバッグの底には、金属音ひとつ立てないよう包まれたアイスピック。
すっと、紗良の座る関係者席の後ろへと歩み寄る。
あと数歩。
手の中で冷たい凶器を握り直した──その瞬間だった。
「下がってください!」
橘の声が鋭く響き、同時に松浦が紗良の腕をとり庇うように前へ出る。
橘は逆側から紗良の肩を抱き、強く引き寄せた。
だが──
「っ、痛っ!」
ヒールが床を滑り、紗良はよろめいて足首をひねった。
体が倒れかけた一瞬、三枝の腕が横から伸びる。
振り下ろされたアイスピックの先が、
松浦と橘の動きに遅れて、一瞬だけ露わになった紗良の左肩にかすめる。
「──ッ!」
冷たい痛みとともに、シャツの肩口が破れ、赤い筋が滲む。
直後、
「動くな!」
旗野が怒声とともに突進し、男を取り押さえる。
カメラが落ちて床を転がる音、もみ合う音、周囲の悲鳴。
橘と松浦は倒れかけた紗良を両側から支え、
そのまま引きずるように会場の通路へと飛び出す。
控室までのわずかな距離が、永遠にも感じられた。
紗良は肩の痛みと足の感覚に耐えながら、橘の背中を強く握る。
「しっかり……!」
松浦の声と共に、扉が閉まった。
静寂が戻った控室で、
松浦がすぐさま紗良の肩の傷に目をやる。
浅い切り傷。けれど、確かに血が滲んでいた。



