男の名前は 三枝孝太郎(さえぐさ こうたろう)。
48歳。
革の古びたカメラバッグの中には、実際に動く一眼レフと、
取材メモのフリをしたA4サイズのクリップボード──そして、その裏にガムテープで固定された細身のアイスピックがあった。
凶器は選び抜いた。
金属探知機に反応しにくい材質、細く、そして何より「記者の荷物」として違和感がないサイズと形。
「ゴシップジャパン」
──低俗な芸能スキャンダルを売りにする三流週刊誌の名義で、偽造の記者証を作った。
編集部のロゴも、ウェブから画像を拾い、ラミネートして仕上げた。
服装はカジュアルなスーツにスニーカー。
いかにも現場慣れした記者風を装う。
受付スタッフは名簿をざっと確認しただけだった。
「あ、はい。ゴシップジャパンさんですね、どうぞ」
それだけで通された。簡単だった。
三枝は数週間前、ある株主掲示板で「セラフィコの総会に、今期は財務大臣の娘が代理出席するらしい」との投稿を見た。
投稿者はおそらく社員か、関係者だったのだろう。
ふざけた顔文字の横に、“お偉いさんの娘が出るって、なんのギャグだよ”とあった。
添付されたリンクのひとつから、すぐに「一ノ瀬紗良」という名にたどり着いた。
財務大臣、一ノ瀬岳──あいつの娘。
三枝の胸に焼き付いている、ネットニュースの顔写真。
「国策失敗、現場の声届かず」の見出しの横に、無神経に笑うようなその顔。
プリントアウトしたそれに、アイスピックを突き立てたことがあった。
ついでに、その娘の顔写真にも。彼女は無関係なのだろう。
だが──それでもいい。
“あいつの血を引いてるなら、それで十分だ”
会場は騒がしく、人が入り混じり、カメラのレンズとシャッター音で満たされている。
紗良がどこに座るのかは、事前にはわからなかったが、
「広報部の人間が端の列に座る」とネット記事の写真で学んだ。
まさにそこに、彼女がいた。
48歳。
革の古びたカメラバッグの中には、実際に動く一眼レフと、
取材メモのフリをしたA4サイズのクリップボード──そして、その裏にガムテープで固定された細身のアイスピックがあった。
凶器は選び抜いた。
金属探知機に反応しにくい材質、細く、そして何より「記者の荷物」として違和感がないサイズと形。
「ゴシップジャパン」
──低俗な芸能スキャンダルを売りにする三流週刊誌の名義で、偽造の記者証を作った。
編集部のロゴも、ウェブから画像を拾い、ラミネートして仕上げた。
服装はカジュアルなスーツにスニーカー。
いかにも現場慣れした記者風を装う。
受付スタッフは名簿をざっと確認しただけだった。
「あ、はい。ゴシップジャパンさんですね、どうぞ」
それだけで通された。簡単だった。
三枝は数週間前、ある株主掲示板で「セラフィコの総会に、今期は財務大臣の娘が代理出席するらしい」との投稿を見た。
投稿者はおそらく社員か、関係者だったのだろう。
ふざけた顔文字の横に、“お偉いさんの娘が出るって、なんのギャグだよ”とあった。
添付されたリンクのひとつから、すぐに「一ノ瀬紗良」という名にたどり着いた。
財務大臣、一ノ瀬岳──あいつの娘。
三枝の胸に焼き付いている、ネットニュースの顔写真。
「国策失敗、現場の声届かず」の見出しの横に、無神経に笑うようなその顔。
プリントアウトしたそれに、アイスピックを突き立てたことがあった。
ついでに、その娘の顔写真にも。彼女は無関係なのだろう。
だが──それでもいい。
“あいつの血を引いてるなら、それで十分だ”
会場は騒がしく、人が入り混じり、カメラのレンズとシャッター音で満たされている。
紗良がどこに座るのかは、事前にはわからなかったが、
「広報部の人間が端の列に座る」とネット記事の写真で学んだ。
まさにそこに、彼女がいた。



