株主総会は定刻通りに始まった。
会場内は、重苦しくも整然とした空気に包まれている。
議事が淡々と進行され、質疑に入っても、
意外にも筆頭株主の男は沈黙を保ったままだった。
──嵐の前の静けさ。
そんな予感が、紗良の背筋をひやりと伝う。
司会が紗良の名を呼ぶ。
「本日は竹下部長の代理として、一ノ瀬紗良様よりご説明をいただきます」
立ち上がった紗良は、一礼し、
「本日はお時間をいただき、誠にありがとうございます」
とマイク越しに丁寧に語りかける。
練習通りに、言葉を選び、資料に沿って説明を続けていく。
社長の補足が入り、いくつかの質問に答えたのち、質疑応答の時間に入った。
──そのときだった。
筆頭株主の席から、重く通る声が響いた。
英語だった。
“With all due respect, the lack of transparency in last quarter’s financial reporting is alarming.
How do you intend to restore stakeholder trust moving forward?”
会場が静まり返る。
その男は眉間に皺を寄せ、まっすぐ紗良を見つめていた。
(先期の報告の不透明さには深刻な懸念がある。
株主の信頼をどう取り戻すつもりか──)
通訳者が確認のために一瞬だけ紗良を見たが、
紗良は軽く頷く。
通訳者が日本語で、ゆっくりと言葉をなぞっていく。
「……前期の財務報告における透明性の欠如に強い懸念がある。
この先、株主の信頼をどう回復するつもりか」
紗良の手のひらに、じんわりと汗がにじむ。
だが、答えなければならない。
この席に立ったのは、自分自身だ──。
会場内は、重苦しくも整然とした空気に包まれている。
議事が淡々と進行され、質疑に入っても、
意外にも筆頭株主の男は沈黙を保ったままだった。
──嵐の前の静けさ。
そんな予感が、紗良の背筋をひやりと伝う。
司会が紗良の名を呼ぶ。
「本日は竹下部長の代理として、一ノ瀬紗良様よりご説明をいただきます」
立ち上がった紗良は、一礼し、
「本日はお時間をいただき、誠にありがとうございます」
とマイク越しに丁寧に語りかける。
練習通りに、言葉を選び、資料に沿って説明を続けていく。
社長の補足が入り、いくつかの質問に答えたのち、質疑応答の時間に入った。
──そのときだった。
筆頭株主の席から、重く通る声が響いた。
英語だった。
“With all due respect, the lack of transparency in last quarter’s financial reporting is alarming.
How do you intend to restore stakeholder trust moving forward?”
会場が静まり返る。
その男は眉間に皺を寄せ、まっすぐ紗良を見つめていた。
(先期の報告の不透明さには深刻な懸念がある。
株主の信頼をどう取り戻すつもりか──)
通訳者が確認のために一瞬だけ紗良を見たが、
紗良は軽く頷く。
通訳者が日本語で、ゆっくりと言葉をなぞっていく。
「……前期の財務報告における透明性の欠如に強い懸念がある。
この先、株主の信頼をどう回復するつもりか」
紗良の手のひらに、じんわりと汗がにじむ。
だが、答えなければならない。
この席に立ったのは、自分自身だ──。



