お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

朝、まだ夜の気配が残る4時台。
目を覚ました紗良は、しばらく天井を見つめていた。自然と身体が冴えている。

ベッドを抜け出し、カーテン越しに空の色を確かめてから、リビングでゆっくりと朝ヨガに取り掛かる。

呼吸を整え、気持ちを内側に集中させる
──「大丈夫、私はやれる」
そう、何度も心の中で繰り返しながら。

前日に用意していた軽めの朝食を済ませ、熱めのシャワーを浴びる。
メイクもヘアセットも丁寧に仕上げていく。

そして、クローゼットの奥から取り出した一着──

父が就職祝いに「送りつけてきた」高級すぎるスーツ。
タグすら切られていなかったその一着を、ためらいなく腕を通す。

「今日は、このスーツでも浮かないよね」
呟きながら姿見の前に立ち、背筋を正す。
深呼吸を一つ。

「今日だけは、お父さんのパワー、借りるから」
自分に言い聞かせるように、心の隙間に差し込む不安をそっと包み込む。

──私は一人じゃない。
そう、何度も繰り返して。

そして、時刻はぴったり午前七時半。

インターフォンが鳴った。

玄関の扉を開けると、そこには橘を筆頭に、松浦、河田、旗野──
そして見慣れない男女の警護官が二人。全員が揃って「おはようございます」と頭を下げる。

すぐに河田が周囲を警戒するように背を向け、エレベーター方面へと視線を移した。
橘が一歩前に出て、手短に言う。

「ご紹介します。本日、補助に入る警護官
──金子と村上です」

二人は簡潔に「よろしくお願いします」とそれぞれ一礼。
金子は紗良とほぼ同年代に見える女性で、目元に凛とした芯の強さがあった。
村上は中堅の男性警護官らしく、動きに無駄がない。

二人はあいさつを終えると、すぐに指定された配置へと離脱していった。
その背を見送りながら、紗良の胸の奥に、また一つ「現実味」が静かに降り積もっていった。