お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

「この後は、交代?」
食後の紅茶を手に、ソファにもたれた紗良が訊ねる。

「はい。本日夜間は、明日に備え猪谷(いがや)という警護官が前に立ちます。紹介いたしましょうか?」

橘の問いに、紗良は軽く首を横に振った。
「ううん、大丈夫。ありがとう」

「承知しました」
橘は一度深く頷くと、時間を確認するように時計へ目をやり、
「では、明朝七時半にお迎えに上がります」
とだけ言って、一礼した。

紗良はその背を見送りながら、ふと気づく。
いつもは静かでもどこか余裕を感じさせる橘の表情が、今日はどこか張りつめていた。
目の奥に、ほんのわずかな焦燥すら浮かんでいるように見えて──

扉が静かに閉じる音がして、部屋には再びひとりきりの空気が戻った。

明日は、何かが違う。
そんな予感が、胸の奥にゆっくりと降りてきた。