お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

株主総会の前日午前。
紗良は執務室で、高坂秘書と最終確認に追われていた。
出席者リスト、答弁資料、予備の控え──すべて丁寧にチェックを重ねる。
そこへ竹下部長が顔を出し、「緊張してないか?」と紗良を激励。
少し照れながらも「がんばります」と返す紗良の横で、坂口もこっそりガッツポーズを見せた。

昼すぎには予定を繰り上げて帰宅。
父が手配してくれた配食サービスの夕食をひとりで食べながら、明日の動線について橘からの最終連絡を確認する。

「明日は朝九時から午後五時まで。長丁場になります」
橘の声は、いつになく慎重だった。
「移動や休憩中の食事は警護車両内でお願いします。警護中のSPは飲食を控えますが、総会中に交代でとりますのでご安心ください」

「そこまで気を張らなくても」と、紗良は肩の力を抜く。
「他の重役にだって民間のセキュリティがついてることはあるし、
さすがにああいう場で何かする人なんて、そうそういないでしょ?」

しかし、橘の声は低く、穏やかに返ってきた。
「脅かしたいわけではありませんが……注目される場所ほど、何かを起こしたくなる者もいます。
油断せず、行動はすべてこちらの指示に従ってください」

紗良は一瞬だけ表情を引き締め、「了解」とだけ答えた。
胸の奥に、少しだけ現実の重みが沈み込んだ。