お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

会議が一通り解散し、メンバーが資料を片付けて散り始めたタイミングで、橘が声を発した。

「河田さん、松浦さん、旗野さん。少しだけ時間いいですか」

その声に振り返った3人が、自然と橘のもとに集まってくる。室内の隅、他の隊員の視線が届かないあたりに立ち止まり、橘が静かに言葉を続けた。

「――まず河田さん。正面の警戒は、動線上の変化に即応してもらう形になります。壇上や通路で不自然な動きがあった場合、最優先で対象との間に入ってください」

「了解」河田が短く頷く。

「松浦さんは対象の右側。あの場ではおそらく唯一の女性SPになります。緊張の兆候や表情の変化に、できる限り目を配っていてください。必要であれば、私の判断で入れ替わってもらうこともあります」

松浦は「はい、任せてください」と即答し、まっすぐ橘を見た。

「旗野さん、外周は今回最もリスクが高いです。場内に入り損ねた来場者、名簿外の関係者、報道関係者……想定されるイレギュラーは複数あります。腕章をつけていない人物が立ち止まったら、即チェックをお願いします。動線内に入られた場合は、隊内で知らせる前に、まずあなたが接触を」

「まかせとけ。いつも通りやるよ」と旗野は微笑を浮かべながらも、目は真剣だった。

橘は一度視線を落とし、再び3人を順に見回してから言う。

「……今回は、対象の高いストレスが予想されます。いつも以上に“気づき”を持って動いてください。細かい異変や目線、挙動の違和感。感じたことは小さくても共有してください。私も全力で支えます」

3人の顔に、一瞬だけ真剣な気迫が重なった。

「以上です。よろしくお願いします」

その言葉を合図に、3人はそれぞれの方向へ散っていった。橘は少しだけその背を見送ると、静かに資料を持ち直し、次の準備に向かって歩き出した。