お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

少しずつ表情に落ち着きが戻ってきた頃、扉がノックされ、坂口と高坂が顔を出した。

「一ノ瀬さん、大丈夫ですか?」
真っ先に声をかけたのは、坂口だった。眉をひそめ、心底心配そうな顔で紗良を見つめている。

高坂は一歩下がって控えめに言った。「社長、珍しくお怒りでしたね。会議室の空気、張り詰めていました」

紗良は微笑んで、少し肩をすくめた。

「大丈夫。ちょっと緊張しすぎただけ。……社内会議でこれじゃ、株主総会はどうなるかって感じだけど」

苦笑する紗良に、高坂はすぐさま続けた。

「株主総会当日は、私が秘書としてすぐ後ろに控えます。もし不測の事態があれば、最大限サポートいたします」

その言葉に、紗良はふっと笑みを浮かべた。

「すごく心強いです。ありがとうございます」

高坂は一礼し、「それでは、また夕方の進行確認で伺います」と言い残し、部屋を出ていった。

残った坂口が、ふと視線を落としながらぽつりと言った。

「一ノ瀬さん……最近、病院には行かれましたか? 本当に、働きづめですよね」

紗良はちらりと横目で橘に視線を送る。

「うん。でも彼、元お医者さんでもあるから。私に何かあっても、きっと何とかしてくれると思うの」

冗談めかして言ったその一言に、坂口はぱちくりと瞬きし、目を大きく見開いた。

「えっ、元お医者さんなんですか!? それは安心ですね」

坂口の声に橘は眉をひとつ上げたが、特に否定もせず静かに目を伏せたままだった。