お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

紗良は小さくうなずいた。だがその動作はいつもより遅く、立ち上がるのにもわずかな時間がかかった。

橘は、手を差し伸べることはしなかった。代わりに、ごく自然な歩幅で一歩下がり、紗良がよろけそうになったらすぐ支えられる位置を保ちながら、静かに横を歩く。

まるで、何事もなかったように。だが、その目は彼女の一歩一歩を決して見逃さない。

会議室の重い扉を抜け、廊下を進み、執務室の前に着くと、橘はそっとドアを開けて彼女を中へ通した。

「こちらへどうぞ」

椅子を引き、紗良が腰を下ろすのを見届けると、橘は片膝をついて彼女の手首に指を添えた。静かに脈を取る。

「少し目を閉じて、気持ちを落ち着かせてください。無理をすると、症状が長引きます」

穏やかで、それでいて抗えないような声。紗良は言われるままに目を閉じ、小さく息を吐いた。

橘の指先は、いつもより少し長く彼女の脈を測っていた。