お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

ひとしきり泣いたあと、紗良はそっと橘から身を離れた。

彼のシャツについた自分の涙が気になったのか、手のひらで軽く払うように確認しながら、ふと顔を上げる。

「ありがとう、もう大丈夫。」

そう言ってふわっと笑った紗良は、何事もなかったように椅子へ戻り、静かに腰を下ろした。

橘は少しだけ顔をそむけたまま、低く静かな声で言った。

「私がいる場所が、あなたの安心できる場所になるのなら……それ以上のことはありません。」

目を合わせないままのその表情に、紗良はふと気づく。

橘の眼には、かすかに涙の光がにじんでいるように見えた。

けれどそのとき、小さな電子音が静けさを裂いた。

橘が耳に手をやり、インカム越しの声に静かに応答する。

「こちら橘。了解しました。すぐに向かいます。」

短くそう言うと、彼は紗良の方を一度だけ振り返り、わずかに口元を引き締めてから歩き出す。

ドアが閉まる音だけが、部屋に残った。

紗良はしばらくその場で、静かに目を閉じた。