お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

紗良はテーブルに視線を落としたまま、かすかに笑って、涙ぐむような声で言った。

「……空気になってて。思いっきり、泣きたいから」

橘は短く目を伏せたあと、小さくうなずいた。

紗良は椅子に座ったまま、ぽつりと息をつく。沈黙がしばらく流れ、その中で彼女の肩が小さく揺れ始める。

そのとき、紗良がそっと手を伸ばした。

無言のまま、その手を見つめた橘は、わずかに歩み寄る。そして何も言わず、彼女のすぐ傍に立つ。

紗良はそのまま両腕を伸ばし、橘の胸元に顔を埋めるようにして抱きついた。橘は驚くことも、押し返すこともせず、ただ黙ってそこにいた。腕を回すことはなかったが、彼の気配は確かに、紗良の傍にあった。

心の中にずっと降り積もっていた重さが、静かに溶けていくような感覚だった。

そして、何も言わない橘の存在が、どんな言葉よりもあたたかく感じられた。