お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

二週間が過ぎた。株主総会の予習もいよいよ大詰めを迎えている。

度重なる残業に、橘をはじめとするSPたちからは帰宅時間の遅さを逐一指摘され、ついには父からも「SPを困らせるな」と電話が入った。紗良はその言葉に、心の中でそっと呟いた。

(……だれのせいよ)

疲れた体にむち打って、高坂から渡された資料に目を通す。失敗は許されない。その意識が、すでに習慣のように胸の奥に張りついている。

夜も更けた頃、玄関のドアがノックされた。手を止め、インターホンの画面を見ると、そこには旗野の姿が映っていた。

「こんばんは。来週の株主総会、ご出席に当たって社外での活動となりますため、詳細を確認したいのですが……今、お時間よろしいですか?」

「はい、どうぞ」

紗良はドアを開け、旗野をリビングへ案内した。資料をひとまず閉じて、テーブルの上を片付ける。

ソファに腰を下ろした旗野は、軽く書類に目を通したあと、ふと口を開いた。

「紗良さん、本題に入る前に……主治医から定期健診の予約についてご連絡が来ています」

「……今は、ちょっと時間がなくて」

紗良は、そう言いかけて言葉を止めた。時間がないことは理由にならないと、誰より自分がよくわかっている。

そんな紗良の様子を察したように、旗野がやわらかな口調で続けた。

「往診にも対応しています。ご都合に合わせて調整できますよ」

(……そういえば、父もそうしていた)

母が病に倒れてから、時折、家に医者を呼んでいた。静かな夜のリビングに、白衣の医師が入ってきたときのあの空気――遠い記憶がふと、胸をよぎる。

紗良は息を吐き、目を伏せたまま言った。

「……じゃあ、その方向でお願いします」

旗野は、ほっとしたように小さくうなずいた。