お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

「ごめんなさい、私、自分の体のこと、あんまり真面目に考えてませんでした」

紗良が静かにそう言ったとき、橘はほんのわずかに眉を寄せた。
言葉の代わりに椅子を引き、彼女のベッドのそばに腰を下ろすと、目線の高さを揃えるようにして紗良を見つめた。

「……自分を責めないでください。紗良さんは、ずっと我慢してきたんだと思います。気づかなかったのは、僕たちのほうです」

彼の声音は低く、でもやわらかかった。
紗良はその目の奥に、責任感と、何より彼女への真剣な想いを見た気がして、胸が少しだけ熱くなる。

「倒れるほど無理してたなんて、思いもしませんでした。これからは、ちゃんと支えますから」

その言葉に、紗良はそっと目を伏せ、こくんと小さくうなずいた。

するとその横で、旗野が「あ〜〜」と、わざとらしく大きく伸びをしてから、やや茶化すように言った。

「おいおい橘、そんな真面目な顔続けてると、皺が増えるぞ。お前の歳でシワシワになってたら目も当てられん」

「……うるさいですよ、旗野さん」

橘が少しムッとしながら言い返すと、旗野はニヤリと笑って肩をすくめた。

「ま、でもあれだな。このタイミングで原因わかってよかったよ。しっかり対策も取れるってことだ」

「……対策?」紗良が聞き返すと、橘が頷いた。

「はい。医師の診断を受けて、今後は警護体制にも変更を加えます。特に外出時はこれまで以上に近距離での警護に切り替えます」

「体調がすぐれない時や、長時間の外出が見込まれる場合は、私ができるだけ付きます。特に日中は、そばにいるようにしますから」

「あと......」旗野が補足するように続けた。

「女性のSPを増員できないか、上にも掛け合ってる最中です。紗良さんにとっても、そのほうが何かと安心だと思います」

「……そんな、大げさじゃ……」と紗良が呟くと、橘がやわらかく首を横に振った。

「大げさではありません。あなたの安全を守るのが、僕たちの仕事ですから」

その真っ直ぐな言葉に、紗良は何も返せず、ただ、ぎゅっとシーツを握った。

(――あぁ、もう一人じゃないんだ)

そう思えた瞬間、心の中に、少しだけ光が差し込んだ気がした。