お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

「退院されても大丈夫ですが、定期的に受診するようにしてください。この数値だと、ふとしたときに意識消失を起こしやすいので……頭を打たないよう、くれぐれも気をつけてくださいね」

医師はそう言い残し、軽く会釈して病室を後にした。

パタンとドアが閉まる音だけが、やけに大きく感じられる。
それを合図にするかのように、病室内にすうっと重たい沈黙が落ちた。

紗良は、ベッドの上で自分の指を見つめながら、なんとも言えない気持ちでつぶやいた。

「……なんだか、へんな感じですね。インフルエンザみたいに、薬飲んで寝てたら元気になるものだと思ってたんです、こういうのって」

笑って言ったつもりだった。でも、その声は少しだけ震えていた。

目を上げると、旗野も橘も、難しい顔をしている。特に旗野は、どこか反省するように眉間にしわを寄せていた。

「旗野さん……そんな顔しないでください。私、ちゃんと看護師さんにも助けてもらって、こうして検査も受けて、診断もついたんだから」

そう言いながら微笑んで見せたが、返ってきたのはやっぱり、無言のままのまなざしだった。

橘もまた、なにかを言いたそうで、でも言葉を選んでいるような表情をしている。

(――たぶん、お二人とも、私に気を使ってくれてる。
でも、私が思ってる以上に「しんどかった」って、きっと今、初めて本気で思ったんだ)

「……ごめんなさい、私、自分の体のこと、あんまり真面目に考えてませんでした」

紗良はそうつぶやいて、ふと天井を見上げた。

けれどその言葉が終わらないうちに、橘が口を開いた。