お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

「……あの、本当に頼んじゃってよかったんですか?」

採血も無事に終わり、ベッドに腰をかけたまま、紗良はそわそわと何度目かの質問をする。
テーブルの上には、ほんの少し後悔したような顔の旗野から受け取った包みが置かれていた。

「大丈夫です。旗野さん、実はけっこう甘いもの好きなので、テンション上がってましたよ」

「うそ……ほんとに?」

「ほんとです。『映えるし可愛いし、これは紗良さんに似合いますね』って、嬉しそうでした」

包みの中には、淡いピンクのいちごムースに、白いクリームと小さなマカロンが飾られたケーキセット。都内でも話題の人気パティスリーの限定商品らしく、カップやスプーンにも淡く金の模様が施されている。

「……可愛すぎて、食べるのもったいない……」

そう呟いて、フォークを手に取った紗良を、橘は穏やかな表情で見守っていた。
「しっかり食べてください。貧血もあるって言われたでしょう?」

「……はい」

一口目を口に運ぶと、ふわりと甘酸っぱい香りが広がり、紗良の表情がほんの少し緩んだ。

「でも……旗野さんに、あんな買い出しさせちゃって、なんか申し訳ないです」

紗良が視線を落とすと、橘は静かに首を振った。

「今は、建物の周囲にも警察官と警備員を増員してます。SPも交代制で張り付いているので、旗野も数十分だけなら離れても問題ありません。体制自体はしっかり維持してますから、安心してください」

「……ほんとに、ずっと守られてるんですね、私」

「そうです。ですから、遠慮せず、今はご自身の体調を第一に考えてください」

その言葉に、紗良はケーキを見つめながらぽつりと呟いた。

「……橘さんたちに警護されるようになってから、ちゃんとご飯食べられたの、多分今日が初めてかもしれないです」

「え?」

「ほら、最初は拒否してたし。途中からは、どこ行っても誰かがついてくるから、なんか落ち着かなくて……」

それに、と言いかけてから、紗良は視線を橘の目からそらした。

「橘さんと、なんか変に距離が近くなるのも、最初はちょっと……意識しちゃって」

「……それは、今は?」

「……今は、安心してます。だから、ちゃんと食べられるのかも」

紗良の声は小さく、でもどこか晴れやかだった。
橘はそれを聞きながら、胸の奥で何かがふと静かに温まるのを感じていた。