「……落ち着いて。大丈夫です、私がいます」
低く、穏やかな声が耳元に届いた。
肩に添えられた手が、かすかに震える紗良の体をそっと支える。
「ゆっくり深呼吸して……そう、いいですよ。そのまま、少しだけ目を閉じて」
橘は過剰な言葉を使わず、ただ一つ一つを丁寧に指示してくれる。
その声に導かれるようにして、紗良は浅く乱れていた呼吸を、ゆっくりと整えていった。
「……ごめんなさい、私……」
「謝らないでください。立ちくらみはよくあることです。むしろ、私がもっと早く戻っていれば」
そう言いながら、橘は紗良の体を支え直し、ベッドの上へと静かに戻す。
まるで壊れ物でも扱うかのような慎重な手つきに、紗良の胸がじんわりと熱くなる。
そっと枕元のリモコンに手を伸ばし、橘はナースコールを押した。
ピッという電子音のあと、すぐにマイク越しに看護師の声が聞こえる。
「どうされましたか?」
「立ちくらみで一時的に意識が不安定になりました。いまはベッドに戻してありますが、一度状態確認をお願いします」
橘の声は端的で冷静だったが、そこには明らかに優しさが滲んでいた。
プロとしての判断と、人としての気遣い――その両方が、声の端々から伝わってくる。
「すぐに伺います」
短い返答ののち、マイクは切れた。
紗良はベッドに身を預けたまま、目を閉じる。
けれどその指先は、橘の手を探すように小さく動いていた。
橘はそれに気づくと、ためらうことなくそっとその手を包み込んだ。
「……もう、心配いりません。ちゃんと見ていますから」
その言葉が、何よりも効いた。
紗良の体から、緊張がすうっと抜けていく。
やっぱりこの人は、私のSPなんだ――そう、心から思えた。
低く、穏やかな声が耳元に届いた。
肩に添えられた手が、かすかに震える紗良の体をそっと支える。
「ゆっくり深呼吸して……そう、いいですよ。そのまま、少しだけ目を閉じて」
橘は過剰な言葉を使わず、ただ一つ一つを丁寧に指示してくれる。
その声に導かれるようにして、紗良は浅く乱れていた呼吸を、ゆっくりと整えていった。
「……ごめんなさい、私……」
「謝らないでください。立ちくらみはよくあることです。むしろ、私がもっと早く戻っていれば」
そう言いながら、橘は紗良の体を支え直し、ベッドの上へと静かに戻す。
まるで壊れ物でも扱うかのような慎重な手つきに、紗良の胸がじんわりと熱くなる。
そっと枕元のリモコンに手を伸ばし、橘はナースコールを押した。
ピッという電子音のあと、すぐにマイク越しに看護師の声が聞こえる。
「どうされましたか?」
「立ちくらみで一時的に意識が不安定になりました。いまはベッドに戻してありますが、一度状態確認をお願いします」
橘の声は端的で冷静だったが、そこには明らかに優しさが滲んでいた。
プロとしての判断と、人としての気遣い――その両方が、声の端々から伝わってくる。
「すぐに伺います」
短い返答ののち、マイクは切れた。
紗良はベッドに身を預けたまま、目を閉じる。
けれどその指先は、橘の手を探すように小さく動いていた。
橘はそれに気づくと、ためらうことなくそっとその手を包み込んだ。
「……もう、心配いりません。ちゃんと見ていますから」
その言葉が、何よりも効いた。
紗良の体から、緊張がすうっと抜けていく。
やっぱりこの人は、私のSPなんだ――そう、心から思えた。



