「ありがとう。親父さん」 わたしは小さな声で言う。最近、親父さんの顔がまともに見られない時があった。反抗期かな? 桜のほんのりした甘みが口の中に広がっていく。 わたしは「春」を意識した。脳裏に、昔、親父さんと見に行った熱海城の桜が浮かんだ。 今度の日曜日に、幼馴染の桃子を誘って、熱海城の桜を見に行こうと思った。