和菓子屋、「花みや」



 店に戻ると、ママが「秋桜」をビニールの手袋をはめて、ショーケースに置いていた。手際の良さがわたしのママながら、素敵。

 和菓子屋の朝が始まっていく。

「行ってくるね。ママ」
 わたしは声をかけて、中学校のカバンを肩にかける。いつも、店の奥にこのカバンを置いて、朝のお散歩をして、戻ったら中学校に行くの。それが日課なの。
「行ってらっしゃいね」
 ママは少し笑って、和菓子を並べる作業に戻る。

 いつもよりちょっと長く、海を見ていたから少し遅くなった。中学校まで小走りになる。

 通学途中にも海が見える。 

 わたしたちは海の街の熱海の住人。だけれど、今日の海はとりわけ機嫌がいいみたい。年に数回レベルに輝いてる。波音が懐かしく青く響いてる。

 いい一日になりますように⭐︎