「『はろうぃん』も他の子も、たくさん売れますように」
ショーケースにわたしは「魔法」をかける。もちろん、『ふり』だけだけれど。
子供の時から魔法少女になりたかった。あれはテレビの中の存在なのはわかってる。ただ、誰も見てない時には、よく、透明な架空のステッキで、和菓子に魔法をかけていた。五歳くらいの小さな頃から。
うちの親父さんは厳しい昔気質の職人さん。朝は五時起きで、この時間帯から不機嫌さ全開で忙しい。ママも忙しく働いてる。わたしは子供だから、ふたりの邪魔なんてできない。和菓子に魔法をかけるしか「できない」。
あと何年かして、高校生になったら、お店のお手伝いをきちんとするつもりだけれど。



