~匠 said ~

週末は由佳がうちにやってくる。
いつまで週末だけなのかは気になるけれど、もう少し我慢をしてみようと思ってる。

今日は紗依ちゃんと食事をしてくると言っていた。
いつもは一緒の週末、一食だけでも一緒じゃ無くなると寂しいのは重傷だな…。
去年まで一人が当たり前で平気だったはずのにこの歳でここまで変わるとは自分でも驚いている。
早く帰って待ってるか、それとも迎えにでも行くか。
そんなことを考えていると、

「匠先生、助けて」
2~3ヶ月前、救急車で運ばれてきた鈴木君だ。
うちの病院は俺に姉夫婦、姪まで五十嵐だから、みんな名前で呼んでいる。

鈴木蓮。
バイク事故でかなり危ない状態で運ばれてきた。
別に直らなくても良いしって、かなりなげやりだった。
でもなぜか途中からリハビリも頑張って、予定より早い退院だったなぁ。
俺が手術しただけでなく、俺が整形に勉強をしに行ってた時に良く話しかけてきてた。

「鈴華に合わせてほしい」
鈴華?

そうだ、西園寺鈴華。
リハビリに関係ないのによく遊びにきてた。

「鈴華が再入院したけど、家族しか入れないって…」

家庭の都合か、病気の都合か判らないけど、面会謝絶だったんだ。

話していたら、慌てて看護師長が走ってきた。
「匠先生、まだおられたんですね。至急戻ってください」

『今日は時間通りに戻れそうにないな』そんな予感がした。