白雪の姫は夜を仰ぐ

今日の取材は " Shirayuki " の新作発表と
今後の展開について ――



そう聞いていたのに、
鈴鹿さんは
ママよりも私にマイクを向けた。



Shirayuki は今後
どのように展開されるのですか?

これからのファッション業界に
期待されることは?



──そんなこと、
ママに聞いた方がいいはずだ。



カメラの前には
" あの " 白雪財閥会長が、
お淑やかに微笑んで座っているのだから。



なのに、それはまるで。



" 白雪財閥の次期会長候補である " 私に、
何かを期待しているような取材。



「 ……大変恐縮ですが、
少し休憩をいただいてもよろしいでしょうか?」



何かを察してくれたのか、
六花が鈴鹿さんの近くの女性に
囁いたのが聞こえた。

あっと驚いたような顔をしたその女性が、
鈴鹿さんに駆け寄って耳打ちする。



「 あっ……大変申し訳ありません。
少し休憩のお時間とらせていただきますね!」

「 ありがとうございます 」

「 でしたら私は、念の為……
お手洗いをお貸りしてもよろしいでしょうか?」

「 かしこまりました。ご案内いたします 」



ママと鈴鹿さんたちが、
来た道を戻っていく。

" 念の為お手洗い " っていうのは多分、
ママが私に気を遣ってくれたんだと思う。



「 六花、少しガーデンを歩いてみてもいい?」

「 もちろんです。ご一緒します 」

「 大丈夫、
少しだけひとりでゆっくりしたくて 」

「 ……かしこまりました 」



六花は困ったように眉を下げたけれど、
すぐ、いつも通りの笑顔で礼をしてくれた。



清く、正しく、美しい白雪。
それらはいつか全て、私の肩に――



ひとりで行動するのなんて、
いつぶりだろう。

しかもこんなに花の咲き誇る、
鮮やかな場所で。



パールにはもちろん、
白雪にはたくさんの執事やメイドがいて、
外出も六花がついてくれている。護衛さんも。

そんな白雪の、私は第一令嬢で。
守り繋ぐことが、白雪 真珠 の使命。



「 ……きれい 」



赤やピンク、
紫やオレンジの鮮やかな花。

その中にそっと佇む、
白と目が合った気がした。



これは確か……ガーベラ。

パーティーで貰う花束にも
入っていることが多い、

可愛くて、おしゃれな花。



「 花言葉は、たしか…… 」



ふと考えていたことが、

無意識に言葉になってしまって
口を閉じた瞬間、

咲き並ぶ花たちがゆらりと振れた。