白雪の姫は夜を仰ぐ

──そして、2時間後。



「 本日はご足労をありがとうございました 」

「 こちらこそ、
夢奏さんにお会いできて光栄でした。
花園様のパーティー、楽しみにしております 」



お迎えの車で
花園邸の門を出る頃には、
時計の針は13時半を指していた。



20分くらいかけてパールに一度戻り、
六花にメイクを落としてもらって、
また着替える。



今度は白雪が持つブランド
" Shirayuki " の新作のセットアップに、
シルバーのアクセサリー。

一度リセットした顔に、
六花が手際よくメイクをしてくれる。



「 行ってらっしゃいませ、真珠様 」

「 行ってきます。天花、風花 」



準備はてきぱきと進んで、
朝と同じように、六花とパールを出る。



行き先は、フラワーガーデン。

取材をしてくれるメディアの人たちが、
" Shirayuki " らしい場所を
押さえてくれたみたい。



護衛さんの車に囲まれながら、30分。
Flower Garden と書かれた門を潜ると――



「 わぁ、きれい 」



辺り一面が、花、花、花。
バラに、チューリップ、アネモネ、ガーベラ。



ここまでとはなくても、
花園邸のように
パールにも花があったらいいのに。



赤、ピンク、黄色、オレンジ……
色鮮やかな花で庭を飾れば、綺麗に違いない。



けれど、私は、私たちは " 白雪 " 。
清く正しく美しい――白の世界。



「 瑠璃様もご到着です 」



六花に開けてもらったドアから体を出すと、
ちょうど隣の車のドアを
瑞花さんが押さえていた。



「 お母さま 」

「 先ほどぶりね。
セットアップ、可愛くて似合ってるわ 」

「 ありがとうございます。
お母さまのドレスもとっても素敵です 」



私のセットアップは、
白に紫ラインが入った、
夏らしい涼しげなアイテム。

ママが着ている白のブレザードレスは
丈が長めで、凛として落ち着いた印象。



" Shirayuki " の新作の中から選んだ、白。

確かに色鮮やかなガーデンを背景に立つと、
とても凛々しく見えるから、

メディアの方たちは、すごい。



「 白雪様、本日はよろしくお願いいたします。
取材させていただきます、鈴鹿と申します 」



駆け寄ってきたスーツの女性、鈴鹿さんは、
ママに向かってお辞儀をすると、

「 こちらへどうぞ 」と
ガーデンの中を進んでいく。



中に入るとより、花、花、花。

たくさんの花が
伸び伸びと咲いていて、

その全てに手が行き届いているのがわかる。



「 ……この辺りで、
取材させていただいてもよろしいでしょうか?」



鈴鹿さんが立ち止まったのは、
ベンチとテーブルが置かれた広めのスペース。

ガーベラやアネモネが、
笑っているように見える。



「 わあ、素敵。お願いいたします 」



ママがそう言って微笑むと、
セットやカメラが整えられて、
鈴鹿さんも座った。