重い扉の音がして、風花が戻ってくると、
あっという間に夕食の時間だ。
「 本日は、杉鹿様より黒豚が届きましたので、
テリーヌにさせていただきました。
念の為、毒味は済んでおりますので、
どうぞ安心してお召し上がりください 」
華やかに盛り付けられたテリーヌと、
焼きたてのバケット、
野菜が溶け込んだスープ。
鹿児島県を拠点とする杉鹿家は、
時々こうして
黒豚や特産品を送ってくれる。
どれも格別においしくて、嬉しい。
それでも、毒味をしなければいけないのは、
私が " 白雪のお嬢様 " だから。
最初の毒味役はきっと、
名前のないメイドさんの誰か。
「 うん。とってもおいしい 」
「 さすが、杉鹿様、
御用達の農場でございますね 」
「 有り難いわ 」
あっという間に夕食は進み、
お皿を下げてくれる天花を横に、
紅茶を口に含んだ。
六花がタブレットを休憩から戻ってくる。
「 真珠様。明日の夕方ですが、瑠璃様より
Snow castle でお話があるようです 」
「 Snow castle で?……分かったわ。
何か用意しておくことはあった?」
「 いえ、それが……。
" Shirayuki " のお話ではないようです。
私も詳しいことは存じ上げないのですが…… 」
六花は眉を傾けて、そっと微笑む。
嘘を言っている表情ではなさそうに見える。
「 分かった。ありがとう 」
Shirayuki のことではないとすると、
思いつくのは
夢奏嬢のお披露目パーティーのお話。
けれどそれなら、そう言ってくれるはず。
色々と考えを巡らせながら
お風呂と寝る支度を
済ませたけれど、
ぴんとくる考えは浮かんでこなかった。
「 おやすみ。天花、風花 」
「「 おやすみなさいませ、真珠様 」」
丁寧にお辞儀をしてくれる2人を背に、
ベッドルームの扉が閉められる。
私のベッドの近くには、
六花のデスクとベッド。
六花は寝るときも側にいてくれて、
朝は私より少し先に起きて着替えているみたい。
天花と風花は、
これから休憩時間。
寝室は別で、
天花と風花用のお部屋がある。
「 ママのお話が気になるわ 」
「 明日は午前中に外商の方が来られますが、
午後は少し早めに
Snow castle へ向かわれますか?」
「 ママの予定は? 」
「 瑠璃様は…… 15時頃まで
White castle にいらっしゃるようです 」
「 White castle…… 」
White castle というのは、
白雪財閥の本拠地のような場所。
白雪財閥の敷地は
White castle 、Snow castle の
2つの大きな棟を中心に広がっている。
White castle は、主にお仕事の場所。
企業グループの
" 本社 " のような棟で、
幹部の方々が毎日お仕事に来てくれている。
Snow castle は、
白雪会長――今はママが住んでいる場所。
ママだけじゃなくて、
お父さまやおばあ様たち、
それからたくさんの
メイドや執事が生活している。
White castle 、Snow castle 、
そのどちらにも、私はほとんど入ることがない。
" 次期会長候補 " といえど、
会長になるまでは令嬢のひとりに過ぎず、
特に White castle にとって
私は部外者に近い……。
「 ……パールでお待ちになりますか? 」
「 そうね。また明日考えるわ 」
「 かしこまりました。
おやすみなさいませ、真珠様 」
「 おやすみ。六花 」
ベッドに入って、照明を落とす。
六花がデスクもとの間接照明をつけて、
タブレットに指を滑らすのが見えた。
あっという間に夕食の時間だ。
「 本日は、杉鹿様より黒豚が届きましたので、
テリーヌにさせていただきました。
念の為、毒味は済んでおりますので、
どうぞ安心してお召し上がりください 」
華やかに盛り付けられたテリーヌと、
焼きたてのバケット、
野菜が溶け込んだスープ。
鹿児島県を拠点とする杉鹿家は、
時々こうして
黒豚や特産品を送ってくれる。
どれも格別においしくて、嬉しい。
それでも、毒味をしなければいけないのは、
私が " 白雪のお嬢様 " だから。
最初の毒味役はきっと、
名前のないメイドさんの誰か。
「 うん。とってもおいしい 」
「 さすが、杉鹿様、
御用達の農場でございますね 」
「 有り難いわ 」
あっという間に夕食は進み、
お皿を下げてくれる天花を横に、
紅茶を口に含んだ。
六花がタブレットを休憩から戻ってくる。
「 真珠様。明日の夕方ですが、瑠璃様より
Snow castle でお話があるようです 」
「 Snow castle で?……分かったわ。
何か用意しておくことはあった?」
「 いえ、それが……。
" Shirayuki " のお話ではないようです。
私も詳しいことは存じ上げないのですが…… 」
六花は眉を傾けて、そっと微笑む。
嘘を言っている表情ではなさそうに見える。
「 分かった。ありがとう 」
Shirayuki のことではないとすると、
思いつくのは
夢奏嬢のお披露目パーティーのお話。
けれどそれなら、そう言ってくれるはず。
色々と考えを巡らせながら
お風呂と寝る支度を
済ませたけれど、
ぴんとくる考えは浮かんでこなかった。
「 おやすみ。天花、風花 」
「「 おやすみなさいませ、真珠様 」」
丁寧にお辞儀をしてくれる2人を背に、
ベッドルームの扉が閉められる。
私のベッドの近くには、
六花のデスクとベッド。
六花は寝るときも側にいてくれて、
朝は私より少し先に起きて着替えているみたい。
天花と風花は、
これから休憩時間。
寝室は別で、
天花と風花用のお部屋がある。
「 ママのお話が気になるわ 」
「 明日は午前中に外商の方が来られますが、
午後は少し早めに
Snow castle へ向かわれますか?」
「 ママの予定は? 」
「 瑠璃様は…… 15時頃まで
White castle にいらっしゃるようです 」
「 White castle…… 」
White castle というのは、
白雪財閥の本拠地のような場所。
白雪財閥の敷地は
White castle 、Snow castle の
2つの大きな棟を中心に広がっている。
White castle は、主にお仕事の場所。
企業グループの
" 本社 " のような棟で、
幹部の方々が毎日お仕事に来てくれている。
Snow castle は、
白雪会長――今はママが住んでいる場所。
ママだけじゃなくて、
お父さまやおばあ様たち、
それからたくさんの
メイドや執事が生活している。
White castle 、Snow castle 、
そのどちらにも、私はほとんど入ることがない。
" 次期会長候補 " といえど、
会長になるまでは令嬢のひとりに過ぎず、
特に White castle にとって
私は部外者に近い……。
「 ……パールでお待ちになりますか? 」
「 そうね。また明日考えるわ 」
「 かしこまりました。
おやすみなさいませ、真珠様 」
「 おやすみ。六花 」
ベッドに入って、照明を落とす。
六花がデスクもとの間接照明をつけて、
タブレットに指を滑らすのが見えた。
