「 おはようございます、真珠様 」



六花の声で始まる、正しい朝。
白雪 真珠の、白く眩しい今日が始まる。



「 おはよう、六花 」

「 ご朝食の準備が整っております 」

「 ありがとう 」



今日のテーブルに並ぶのは、

朝日みたいな目玉焼きが
真ん中に乗ったガレットと、

天花が淹れてくれているハーブティー。



「 本日は、
レモングラスをブレンドしております 」

「 嬉しい、ありがとう。
おかわりを頂いてもいい? 」

「 かしこまりました 」



天花の淹れるハーブティーは、
優しくてあたたかい。



英語が話せて、数学も得意で、
ハーブティーや料理にも通じている天花。

彼女もまた、本当の名前や過去を話さない。
それが、白雪財閥の取り決めだから。



「 ……白雪は、取り決めが多いと思わない?」



ベッドを整えて戻ってきた六花へ問いかける。

六花は少し
驚いたような顔をしたけれど、

表情をもとに戻すと、一呼吸置いた。



「 真珠様を、お守りするためでございます 」

「 そうね 」



そう答えるように、
いつか教わったのかもしれない。

けれど、きっとそれは
本当にその通りで、正しい。



「 真珠様。
本日はどなたともお約束がありませんが、
いかがいたしましょうか?」



六花はタブレットを一瞥すると、
私の方に向き直って微笑む。



……学校に行ってみたい。


ふとよぎった言葉をもし口にしたら、
きっと六花をまた驚かせてしまう。



今日の私は多分、どこか変――


そう思うと同時に
暖さんの顔が脳内にちらつく。



「 ……勉強を進めたいから、天花にお願い。
それから、バイオリンの練習も 」

「 かしこまりました 」



いかがいたしましょうか?と聞かれても、
ほとんど過ごし方は決まっている。



勉強したり、
バイオリンを弾いたり、

ママがパールに来たら、
一緒にお茶を飲んだり。