江ノ島に行ったあの日から、数週間たったある日。
期末テストが終わって、結果が返ってきた。結果は言うまでもなく、最悪な点数だ。
想良とばかり会っていたからだろうけど。
このまま家に変えるのが億劫だと思っていた時、また名前の知らない女の子に話しかけられた。
「ねえ凪希くん!この映画知ってる?」
「あーなんとなく。さいきん人気の俳優さんが出るんだっけ?」
「そうそう、さいきん主演ばんばん決めててさ。20歳だよ、まだ!」
「観て、この完成試写会の挨拶の動画!」
「本当に
浜田 想良
って綺麗だよね」
「えっ?」
聞き覚えのある名前。
彼女達が囲むスマホをのぞいて、どくんと脈打つ。
想良に似てる。いや、想良だ。
でも、笑い方も話し方も全く違う。
画面の中のその女は、大きく背中の開いたエメラルドのドレスを着ていて、耳元には小さなピアスをしている。
20歳という年齢よりも大人っぽい。
俺の知ってる想良とは違う。可愛らしさというより、色気って感じだ。
でも、時々“知っている”。
醸し出す雰囲気とか、笑ったときにできる目尻のシワの感じとか。ところどころではあるけど、“知ってる”。
「たしかに、綺麗だけどさあ…たしか、いま浜田想良って炎上してるよね?」
「……え?」
「え?凪希くん知らないの?この前もだよ、熱愛疑惑。これで2回目」
知らない、そんなこと。テレビは元々観ないし、SNSは勉強の邪魔といって消した。
もしかして、記者の言ってた記事ってそのことか?
「いやあ、やっぱ可愛いからモテるんだよね。男の影が絶えないね」
「いや、自分で愛想振りまいてるだよ」
「…は?」
思わず声がこぼれでる。
「たしかに!男性俳優への目線見てよ。色目使っちゃってさあ」
「欲求不満?これだけ可愛いのに、イケメンも欲しいとか、がめつくない?」
なんで、そんなこと言うんだ?
お前ら、想良と話したことあるのか?ないだろ?どうして憶測だけでそんなに悪く言えるんだよ。
本当だったとしても、自分が何かされた訳でもないのに、なぜそんなにきつい言葉が出るんだ。
彼女は、とても透明な心を持っているのに。すごく優しくて、よく人の事を見ているような人なのに。
所詮、外見しか見ていないんじゃないか。内側がどうであれ、そんなの関係ないんだ。
「ほんと。ビッチだよね」
集まっていた数人の女の子の内、1人が口元に手を当てて小さく呟いた。
その一言で、眉間にしわが寄るのが分かる。
思わず、その子の口元に当てた手を掴む。 力がこもる。
「……うるせーよ」
その声が自分のものだとは思えないほどに低く、ハッとする。
「っあ…いや、」
しまった、と思った。咄嗟に手を離す。
周りにいた女たちは、酷く驚いた顔、引きつった顔、と様々だった。
女の人のこんな顔は初めて見た。やっぱり、俺は、凪のように笑ってなきゃいけないんだ。
(やべ、この空気どうしよ…)
そう思うのに、笑えない。口角が上手く動かせない。顔が引きつってしまう。
「凪希!俺の声デカすぎたか?そんな怒んなって」
「陽太…」
陽太は俺の肩にどかっと体重をかけ、複雑だった空気を笑い飛ばした。
そんな陽太を見た彼女たちは「なんだ…陽太がうるさかったのかあ」と口々に言っていた。
つまり、この場を上手く凌げたということだ。
「お前ら、ほら散れ!…おい、凪希。自販機行くぞ」
そう言って彼は、俺のカーディガンを引っ張った。
期末テストが終わって、結果が返ってきた。結果は言うまでもなく、最悪な点数だ。
想良とばかり会っていたからだろうけど。
このまま家に変えるのが億劫だと思っていた時、また名前の知らない女の子に話しかけられた。
「ねえ凪希くん!この映画知ってる?」
「あーなんとなく。さいきん人気の俳優さんが出るんだっけ?」
「そうそう、さいきん主演ばんばん決めててさ。20歳だよ、まだ!」
「観て、この完成試写会の挨拶の動画!」
「本当に
浜田 想良
って綺麗だよね」
「えっ?」
聞き覚えのある名前。
彼女達が囲むスマホをのぞいて、どくんと脈打つ。
想良に似てる。いや、想良だ。
でも、笑い方も話し方も全く違う。
画面の中のその女は、大きく背中の開いたエメラルドのドレスを着ていて、耳元には小さなピアスをしている。
20歳という年齢よりも大人っぽい。
俺の知ってる想良とは違う。可愛らしさというより、色気って感じだ。
でも、時々“知っている”。
醸し出す雰囲気とか、笑ったときにできる目尻のシワの感じとか。ところどころではあるけど、“知ってる”。
「たしかに、綺麗だけどさあ…たしか、いま浜田想良って炎上してるよね?」
「……え?」
「え?凪希くん知らないの?この前もだよ、熱愛疑惑。これで2回目」
知らない、そんなこと。テレビは元々観ないし、SNSは勉強の邪魔といって消した。
もしかして、記者の言ってた記事ってそのことか?
「いやあ、やっぱ可愛いからモテるんだよね。男の影が絶えないね」
「いや、自分で愛想振りまいてるだよ」
「…は?」
思わず声がこぼれでる。
「たしかに!男性俳優への目線見てよ。色目使っちゃってさあ」
「欲求不満?これだけ可愛いのに、イケメンも欲しいとか、がめつくない?」
なんで、そんなこと言うんだ?
お前ら、想良と話したことあるのか?ないだろ?どうして憶測だけでそんなに悪く言えるんだよ。
本当だったとしても、自分が何かされた訳でもないのに、なぜそんなにきつい言葉が出るんだ。
彼女は、とても透明な心を持っているのに。すごく優しくて、よく人の事を見ているような人なのに。
所詮、外見しか見ていないんじゃないか。内側がどうであれ、そんなの関係ないんだ。
「ほんと。ビッチだよね」
集まっていた数人の女の子の内、1人が口元に手を当てて小さく呟いた。
その一言で、眉間にしわが寄るのが分かる。
思わず、その子の口元に当てた手を掴む。 力がこもる。
「……うるせーよ」
その声が自分のものだとは思えないほどに低く、ハッとする。
「っあ…いや、」
しまった、と思った。咄嗟に手を離す。
周りにいた女たちは、酷く驚いた顔、引きつった顔、と様々だった。
女の人のこんな顔は初めて見た。やっぱり、俺は、凪のように笑ってなきゃいけないんだ。
(やべ、この空気どうしよ…)
そう思うのに、笑えない。口角が上手く動かせない。顔が引きつってしまう。
「凪希!俺の声デカすぎたか?そんな怒んなって」
「陽太…」
陽太は俺の肩にどかっと体重をかけ、複雑だった空気を笑い飛ばした。
そんな陽太を見た彼女たちは「なんだ…陽太がうるさかったのかあ」と口々に言っていた。
つまり、この場を上手く凌げたということだ。
「お前ら、ほら散れ!…おい、凪希。自販機行くぞ」
そう言って彼は、俺のカーディガンを引っ張った。

