そう言って遥臣は美琴にキスをした。
あの日の遥臣は少し様子がおかしく、疲れているようだった。普段から美琴を抱きしめると疲れが飛ぶと言っていたくらいだから、癒しを求めてみたのだろうか。
(いやいやいや、それはさすがに無いでしょ)
美琴は自分の思考に激しくツッコミを入れる。
遥臣が美琴を純粋に求めてくれていたとしたら、どれほど嬉しいだろう。でも、今はっきりわかっているのは、彼のキスに驚いたけれど嫌ではなかったという自分の気持ちだけだった。
(余計なことを考えるのはやめよう。明日は陽菜ちゃんの手術なんだから)
気持ちを切り替えた美琴は、いつもの駐車場に車を停め裏口から病院内に入り廊下を進む。
「平林先生」
声を掛けられた方を見ると陽菜の父が小走りで近寄ってきた。
「……あ、ご結婚されているから瀬戸先生でした」
陽菜の父はきまりの悪い顔で頭を掻いたが、美琴は笑顔で返す。
「いえ、それだと“瀬戸先生”がふたりになってしまいますから、お好きに呼んでください。これから病室に行かれるんですか?」
「はい。いよいよ、明日ですから。なるべく傍にいてあげたくて」
あの日の遥臣は少し様子がおかしく、疲れているようだった。普段から美琴を抱きしめると疲れが飛ぶと言っていたくらいだから、癒しを求めてみたのだろうか。
(いやいやいや、それはさすがに無いでしょ)
美琴は自分の思考に激しくツッコミを入れる。
遥臣が美琴を純粋に求めてくれていたとしたら、どれほど嬉しいだろう。でも、今はっきりわかっているのは、彼のキスに驚いたけれど嫌ではなかったという自分の気持ちだけだった。
(余計なことを考えるのはやめよう。明日は陽菜ちゃんの手術なんだから)
気持ちを切り替えた美琴は、いつもの駐車場に車を停め裏口から病院内に入り廊下を進む。
「平林先生」
声を掛けられた方を見ると陽菜の父が小走りで近寄ってきた。
「……あ、ご結婚されているから瀬戸先生でした」
陽菜の父はきまりの悪い顔で頭を掻いたが、美琴は笑顔で返す。
「いえ、それだと“瀬戸先生”がふたりになってしまいますから、お好きに呼んでください。これから病室に行かれるんですか?」
「はい。いよいよ、明日ですから。なるべく傍にいてあげたくて」



