「ほんと、憎らしいよね。あなた!」

「伊月も、ようやく地が出てきたね。その方がずっといいよ!」

 何か言うと、何倍にもなって返ってくる。
 この感じ、兄貴との小さい頃にした口喧嘩にすごーくよく似てると思う。

 最初は、海に行こうね、と話してた。
 でも、あまりに暑すぎるので、このままいろんなカフェを転々として、何時間でも粘ろうね、と前日に予定を変更したの。

「まあ、それはそれ。伊月、誕生日おめでとう!」
 朔くんはラッピングされた白い袋をわたしにくれた。

 開けてみると、あの可愛い猫ちゃんの柄の水筒だった。

「羽根の生えてるのは、天使なのかな」

「さあ。ツバサって名前のキャラなんだよね。鎌倉出身のイラストレーターさんが描いてるらしい。秋になったら、売ってるショップ一緒に行こうな。俺もさ」

 朔くんは一瞬だけ言葉を止めた。

「同じの買った。俺のは蓋が青い水筒。伊月のは蓋がエメラルドの水筒。お揃いだから、お盆明けに、弁天先生たち、何か気づくかもね!」

「水筒が、あの畳の狭い部屋の中に二つあるのかー」

「三つだよ。小学校一年生の時に買った水筒だってまだまだ使えるし! お盆明けからは、水筒二つに毎朝、麦茶入れるわけだよね」