これは。見られたのかな。決定的瞬間を。

 でも、兄貴は全然、冷やかす言葉なんか言わなかった。お父さんとお母さんはとっくに席に戻ってた。

 しばらくぶりに、家族の団欒だったの。
 わたしはぶどうジュースを三杯も飲んで、その他のジュースも烏龍茶も飲んだ。ミスジ肉などの盛り合わせはあっという間になくなり、兄貴と連れ立って、中華ちまきや小籠包を取りに行った。

 兄貴は、柔道の重圧からようやく自由になれたんだな。とわかる。話してると、兄妹ってやっぱり特別でかけがえない。

「勝手に壁を作ってたね。ごめん」
 中華ちまきを取りに行った帰り、隣の兄貴にぽつりと言う。
「それはお互いさまかも、な」
 兄貴は日に焼けた頬をかすかに染めて、香ばしく笑った。

 パパパパーン。
 何かの打ち上がる音が聞こえてきた。
「あら、花火かな」
 お母さんがのんびりと言う。わたしははっと気づく。今、「朔くん」の言ってた時刻だよね。さっきから三十分後。