【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。

桜の開花宣言が、全国の街に春の訪れを告げはじめた頃――
警視庁本部のエントランスにも、風に舞う花びらの気配がちらほらと感じられる。

その朝、長谷川康太はまっすぐ前を見据え、背筋を伸ばして新しい部署の扉をくぐった。

「本日より、捜査二課に着任いたしました。警部補の長谷川康太です。よろしくお願いいたします」

その声には、これまでの経験と努力を積み重ねてきた自信がにじむ。
落ち着いた表情で周囲を見渡すその姿は、かつて交番で軽口をたたいていたおちゃらけた警察官とは、もう別人のようだった。

その様子を、少し離れた廊下の角から静かに見守っている人物がいた。
神谷涼介だった。

扉越しに聞こえる長谷川の挨拶に、神谷はふっと目を細める。
まるで弟分を送り出す兄のような気持ちで、胸の奥に熱いものが込み上げてくる。

「……頑張れよ、長谷川」

声には出さず、心の中で静かに言葉を送る。
その背中には、これから始まる新たな使命と、未来への期待が確かに刻まれていた。

春は、出会いと別れと、新たな始まりの季節――
長谷川康太の物語も、また一つ新しい章へと進み始めていた。