【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。

電話を切ったあと、美香奈はしばらくスマホを見つめたまま、深く息を吐いた。

(……そうだ。あの事件は、まだ終わっていなかったんだ。)

昨年の寒い冬の日、突然巻き込まれた傷害事件と不法侵入。
神谷と出会うきっかけにもなった、決して幸せとは言えない出来事。
あの夜に受けた深い傷と、それと引き換えにもらった「誰かに守られる」温かさ。
どちらも、美香奈の心に今も確かに根を下ろしていた。

これから裁判が始まるという現実は、彼女に改めて思い知らせた。
被害者であることの過酷さを――。

忘れたかった。
普通の毎日に埋もれさせてしまいたかった。
けれど司法は、容赦なくそれを思い出させる。

「守るため」の法律が、同時に「過去をえぐる刃」となって突き刺さることもある。
美香奈は静かに、司法制度の二面性――
盾にもなり、刃にもなる現実を、苦しくも冷静に受け止めるしかなかった。