数日後。
交番内で一段落ついた午後、長谷川は所長に呼び出された。
「長谷川、ちょっと話がある。」
呼び止められ、背筋を伸ばして応じると、所長は真剣な面持ちで続けた。
「お前の働きぶりを見ててな。来年の警部補昇任試験、受けてみないか?」
「──えっ、俺が……警部補に、ですか?」
思わず素の声が出る。
驚きに目を見開いた長谷川に、所長は静かに頷いた。
「お前は現場をよく見てるし、判断も早い。若い隊員たちの信頼も厚い。それに、支援案件みたいな繊細な仕事にも、手を抜かずに向き合える。それは簡単なことじゃない。」
言葉の一つひとつが、重かった。
長谷川は手のひらを握りしめ、心の中に広がる動揺を必死に押さえた。
その夜、交番の仮眠室で一息ついていると、若い巡査たちが集まってきた。
「長谷川さん、警部補になるんですって?」
「絶対、なったほうがいいですよ! 俺たち、長谷川さんについていきたいです!」
はにかみながらも真剣な眼差しで言う部下たちに、長谷川は言葉を失った。
普段は冗談ばかり飛ばし合っている後輩たち。その彼らが、こんなに真っ直ぐに応援してくれるなんて。
「……ありがとな。」
ようやく絞り出すように言葉を返すと、長谷川は小さく息を吐いた。
「でも、ちょっとだけ、考えさせてくれ。」
笑いながらも、心は真剣だった。
警部補という肩書きが持つ責任の重さを、長谷川は十分に分かっていた。
自分に、それだけの重みを背負う覚悟ができているのか。
今すぐ答えは出なかったけれど──
それでも、信じて背中を押してくれる仲間たちがいることが、胸にじんわりと温かかった。
静かな夜の交番で、長谷川はひとり、これからの自分に向き合い始めていた。
交番内で一段落ついた午後、長谷川は所長に呼び出された。
「長谷川、ちょっと話がある。」
呼び止められ、背筋を伸ばして応じると、所長は真剣な面持ちで続けた。
「お前の働きぶりを見ててな。来年の警部補昇任試験、受けてみないか?」
「──えっ、俺が……警部補に、ですか?」
思わず素の声が出る。
驚きに目を見開いた長谷川に、所長は静かに頷いた。
「お前は現場をよく見てるし、判断も早い。若い隊員たちの信頼も厚い。それに、支援案件みたいな繊細な仕事にも、手を抜かずに向き合える。それは簡単なことじゃない。」
言葉の一つひとつが、重かった。
長谷川は手のひらを握りしめ、心の中に広がる動揺を必死に押さえた。
その夜、交番の仮眠室で一息ついていると、若い巡査たちが集まってきた。
「長谷川さん、警部補になるんですって?」
「絶対、なったほうがいいですよ! 俺たち、長谷川さんについていきたいです!」
はにかみながらも真剣な眼差しで言う部下たちに、長谷川は言葉を失った。
普段は冗談ばかり飛ばし合っている後輩たち。その彼らが、こんなに真っ直ぐに応援してくれるなんて。
「……ありがとな。」
ようやく絞り出すように言葉を返すと、長谷川は小さく息を吐いた。
「でも、ちょっとだけ、考えさせてくれ。」
笑いながらも、心は真剣だった。
警部補という肩書きが持つ責任の重さを、長谷川は十分に分かっていた。
自分に、それだけの重みを背負う覚悟ができているのか。
今すぐ答えは出なかったけれど──
それでも、信じて背中を押してくれる仲間たちがいることが、胸にじんわりと温かかった。
静かな夜の交番で、長谷川はひとり、これからの自分に向き合い始めていた。



