【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。

しばらくぶりに、美香奈に新たな仕事が舞い込んできた。これまでも時々関わっていた、犯罪被害者支援センターからの依頼だ。


「今回は、DV被害者の転居支援と住民票の秘匿が必要だって。特に、住民票の手続きが難しいんだ。」


真木弁護士の声が電話越しに響く。
いつもの冷静で落ち着いた口調だったが、その裏には依頼者を守らなければならないという責任の重さが滲んでいるのがわかる。


美香奈は少し息をついてから答えた。
「わかりました。佐伯心理士と話をして、すぐに対応できるように手配します。」


犯罪被害者支援センターでは、被害者のニーズに合わせた支援が求められる。
そのためには、ただ手続きを進めるだけではなく、心理的なサポートや生活面での配慮も欠かせない。


美香奈はすぐに、支援の中核を担う佐伯心理士と連絡を取った。
佐伯は、被害者の心のケアに非常に熱心な人物で、美香奈もそのプロフェッショナルとしての姿勢に信頼を寄せていた。


数日後、二人は支援センターで再び顔を合わせ、詳しい事情を聞き取ることになった。
美香奈はノートを広げ、佐伯の言葉を一つ一つメモしながら、依頼者が抱える問題の深刻さを実感する。


「被害者は、もう何度も転居しているけど、その度に新たな暴力に悩まされてきたんです。今回も、住所を知られることを恐れています。」


佐伯の言葉に、美香奈はうなずきながら黙って聞いた。
これまでにも似たような依頼を受けたことはあったが、今回のケースは特に慎重に進めるべきだと感じていた。


「住民票の秘匿手続きは、行政との調整も必要ですし、引っ越し先の手配にも時間がかかるかもしれません。」


美香奈がメモを取る手を止め、顔を上げて言った。


「まずは、被害者の希望を優先して、転居先の条件を整えます。そこから必要なサポートを組み立てていきましょう。」


佐伯も頷く。 

「美香奈さんがいれば、きっと上手く進みます。」


その言葉に励まされると同時に、美香奈は改めてこの仕事の重要性を感じていた。


彼女の手には、ただの手続きだけでなく、何度も繰り返し傷つけられた心を癒すための大きな責任があることを自覚していた。