【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。

「……でもさぁ、美香奈ちゃん」
美咲が、湯気の立つコーヒーをかき混ぜながら言った。

「神谷さんだって、絶対、どっかにほっこりエピソードあるはずだよ!」

「えぇ~……」
美香奈はちょっと困った顔になる。

「“無愛想”の代名詞だよ? 涼介くん」

「いやいや、探そう!
どんなに険しく見えても、絶対どこかに“優しい一面”ってあるから!」

 
美咲の勢いに押されて、美香奈は腕を組んで、
ふぅーっと考え込んだ。

 
「うーん……。あ、そういえば」

美香奈の顔がぱっと明るくなる。

 

「この前、ベランダにスズメが迷い込んできたんだよね」

「うんうん」

「そしたら涼介くん、めっちゃ真剣な顔して、
『絶対傷つけないで外に出してやる』って……
軍手取り出して、ベランダでスズメ相手に一時間以上格闘してた」

 

美咲はテーブルに突っ伏した。

「最高すぎる……!!」

「しかも、スズメが自力でぴょんって飛び立ったとき、
ほっとしてしゃがみ込んでたよ。
“よかったぁぁ……”って」

 

「神谷さん、それもう完全に【交番勤務おじいちゃん警官】のやさしさだよ……」
美咲が涙ぐみながら笑う。

 

さらに美香奈はぽつりと続けた。

「あとね、スーパーで1人でいた小さい子が、お菓子の入った買い物カゴひっくり返しちゃった時も、
“お母さんに見つかったら怒られるだろう”って、拾って渡してた。
無表情で、無言で」

 
「無表情はやめなさいよー!!」
美咲がテーブルを叩いて爆笑する。

「でもお母さん、すごく感謝してたよ。
たくさん入ってたから拾うの大変だったみたいで……」

「それは神谷さん、ポイント高いわ!」

 

2人で顔を見合わせ、くすくすと笑った。

 

「……こうやって話してるとさ、やっぱりすごく優しいよね、涼介くん」

美香奈は、胸の中がふわっと温かくなるのを感じながら、小さく頷いた。

 

「うん。そうだね。普段は言葉にしないだけで、
2人でいる時は結構優しくしてくれるし」

(結構どころではなく、本当はベタベタに甘やかされているが)

その言葉に、美咲も優しく笑った。

 
「そうだよ。だから、美香奈ちゃんも、私も、
いい人をちゃんと捕まえられたんだね」

 

どこか誇らしげに言う美咲に、
美香奈も「うん」と素直に答えた。

 
――どんな小さなことも、見逃さないで大切にできる人。
そんな彼らだからこそ、きっとこれからも、
たくさんの“ほっこり”を作っていける。

 

2人は、窓の外に広がる柔らかな光を見上げながら、
そっと、同じ未来を信じた。