社内で承認を得た後、優香はAXIONの所属する芸能事務所「Crescendo Works」に、出演依頼のメールを送った。
すぐにマネージャーから返信があり、条件交渉と打ち合わせのため、事務所を訪問することになった。
指定された日、優香は少し緊張しながら、ビルの受付を通り、Crescendo Worksのオフィスに向かった。
中は、白を基調としたシンプルながらも洗練された空間だった。壁には所属タレントたちのポスターがずらりと並んでいる。
応接室に通されると、すぐにAXIONのマネージャー、岡田が現れた。
「水瀬さんですね。AXIONのマネージャーの岡田です。よろしくお願いします」
スーツ姿の岡田は、無駄な愛想はないが、対応は誠実だった。
席に着くと、優香は事前にまとめてきた資料を机に広げた。
「こちらが、社員総会当日のスケジュール案と、イベント趣旨になります」
岡田は資料に目を通しながら、ポイントを押さえて質問してくる。
拘束時間、ステージ設営状況、控室の有無――一つ一つ丁寧に確認していった。
「裏話トークメイン、ですよね。特にパフォーマンスはなし、と」
「はい。あくまで社員向けのお楽しみ企画ですので」
契約書のひな型も提示され、双方が細かい部分をすり合わせていく。
優香は、慣れない芸能関係の交渉に戸惑いながらも、真剣に向き合った。
打ち合わせも終盤に差しかかったころだった。
ふと、扉の向こうから軽やかな足音が聞こえた。
ガチャ、とドアが少し開き、覗き込むように顔を出したのは――
「岡田さん、次の打ち合わせ、何時だっけ?」
ラフなジャケットに黒いキャップを被った男。
――御子柴和希だった。
優香は、思わず目を見張った。
テレビやCMで何度も見た顔が、すぐそこにある。
「おっと、すまん。今打ち合わせ中だったか」
和希はにっと笑って、気まずそうに頭を下げた。
岡田が軽く手を振り、
「あと五分で終わる。待ってろ」と応じる。
和希は「オッケー」と短く返し、ドアを閉めた。
優香は、心臓が脈打つのを感じながら、再び資料に目を落とした。
すぐにマネージャーから返信があり、条件交渉と打ち合わせのため、事務所を訪問することになった。
指定された日、優香は少し緊張しながら、ビルの受付を通り、Crescendo Worksのオフィスに向かった。
中は、白を基調としたシンプルながらも洗練された空間だった。壁には所属タレントたちのポスターがずらりと並んでいる。
応接室に通されると、すぐにAXIONのマネージャー、岡田が現れた。
「水瀬さんですね。AXIONのマネージャーの岡田です。よろしくお願いします」
スーツ姿の岡田は、無駄な愛想はないが、対応は誠実だった。
席に着くと、優香は事前にまとめてきた資料を机に広げた。
「こちらが、社員総会当日のスケジュール案と、イベント趣旨になります」
岡田は資料に目を通しながら、ポイントを押さえて質問してくる。
拘束時間、ステージ設営状況、控室の有無――一つ一つ丁寧に確認していった。
「裏話トークメイン、ですよね。特にパフォーマンスはなし、と」
「はい。あくまで社員向けのお楽しみ企画ですので」
契約書のひな型も提示され、双方が細かい部分をすり合わせていく。
優香は、慣れない芸能関係の交渉に戸惑いながらも、真剣に向き合った。
打ち合わせも終盤に差しかかったころだった。
ふと、扉の向こうから軽やかな足音が聞こえた。
ガチャ、とドアが少し開き、覗き込むように顔を出したのは――
「岡田さん、次の打ち合わせ、何時だっけ?」
ラフなジャケットに黒いキャップを被った男。
――御子柴和希だった。
優香は、思わず目を見張った。
テレビやCMで何度も見た顔が、すぐそこにある。
「おっと、すまん。今打ち合わせ中だったか」
和希はにっと笑って、気まずそうに頭を下げた。
岡田が軽く手を振り、
「あと五分で終わる。待ってろ」と応じる。
和希は「オッケー」と短く返し、ドアを閉めた。
優香は、心臓が脈打つのを感じながら、再び資料に目を落とした。



