午後、デスクに戻ったとき、スマホが震えた。
和希からのメッセージだった。
「もう知ってると思うけど、俺の方で話すよ。任せて」
◇◇
その日の夜。ネットニュースを見ると、動画とともに新しい記事がアップされていた。
「AXION・御子柴和希、“一般女性との真剣交際”を認める」
優香は、動画を再生した。
***
AXIONの新曲リリースイベントの後。
会場の一角に、囲み取材用のスペースが設けられていた。
記者たちがカメラを構え、MCの合図で和希が一歩前に出る。
メディアが集まる中、彼はいつも通りの落ち着いた表情でマイクを取った。
「……報道でご存知の方もいると思いますが、今、ある女性とお付き合いしています。
芸能関係の方ではありません。普通に会社で働いている人です」
一瞬、カメラのフラッシュが明るく光る。
和希は少し間を置き、真っ直ぐに言葉を続けた。
「こういう立場だから、相手を巻き込むことになるかもしれないって、最初はすごく悩みました。
でも、僕にとっては、ただ一人の大切な人です。
ふたりで静かに歩いていくことが、何より大事だと思っています」
記者のひとりが声を上げた。
「今後、ご結婚の予定などは?」
和希は少しだけ笑った。
「まだ具体的な話はしてませんが……正直、そういう未来を考えられる人です。
焦らずに、でも誠実に、一歩ずつ進んでいきたいと思っています」
また別の記者が続けた。
「ファンへの説明責任は?」
和希はすっと姿勢を正した。
「ファンの皆さんには、感謝しかありません。
自分を信じてくれる人がいるからこそ、こうして活動を続けていられます。
だからこそ、ごまかしたくなかったんです。
今回、ちゃんと自分の言葉でお伝えしたかった。それだけです」
そこにいた記者たちの一部から、小さな拍手が起こった。
和希は深く一礼し、そのまま取材エリアを後にした。
***
優香は、静かにスマホを伏せた。
――怖かった。でも。
そこに映っていた和希の笑顔は、あのとき別れた夜とはまったく違って見えた。
和希からのメッセージだった。
「もう知ってると思うけど、俺の方で話すよ。任せて」
◇◇
その日の夜。ネットニュースを見ると、動画とともに新しい記事がアップされていた。
「AXION・御子柴和希、“一般女性との真剣交際”を認める」
優香は、動画を再生した。
***
AXIONの新曲リリースイベントの後。
会場の一角に、囲み取材用のスペースが設けられていた。
記者たちがカメラを構え、MCの合図で和希が一歩前に出る。
メディアが集まる中、彼はいつも通りの落ち着いた表情でマイクを取った。
「……報道でご存知の方もいると思いますが、今、ある女性とお付き合いしています。
芸能関係の方ではありません。普通に会社で働いている人です」
一瞬、カメラのフラッシュが明るく光る。
和希は少し間を置き、真っ直ぐに言葉を続けた。
「こういう立場だから、相手を巻き込むことになるかもしれないって、最初はすごく悩みました。
でも、僕にとっては、ただ一人の大切な人です。
ふたりで静かに歩いていくことが、何より大事だと思っています」
記者のひとりが声を上げた。
「今後、ご結婚の予定などは?」
和希は少しだけ笑った。
「まだ具体的な話はしてませんが……正直、そういう未来を考えられる人です。
焦らずに、でも誠実に、一歩ずつ進んでいきたいと思っています」
また別の記者が続けた。
「ファンへの説明責任は?」
和希はすっと姿勢を正した。
「ファンの皆さんには、感謝しかありません。
自分を信じてくれる人がいるからこそ、こうして活動を続けていられます。
だからこそ、ごまかしたくなかったんです。
今回、ちゃんと自分の言葉でお伝えしたかった。それだけです」
そこにいた記者たちの一部から、小さな拍手が起こった。
和希は深く一礼し、そのまま取材エリアを後にした。
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優香は、静かにスマホを伏せた。
――怖かった。でも。
そこに映っていた和希の笑顔は、あのとき別れた夜とはまったく違って見えた。



