「妹の帰り、遅いから迎えにきた」 とだけ、兄貴は速水さんに言う。そして、 「行くぞ。伊月」 と、身内特有のライトな感じで言って、わたしの手を少し強引に引っ張った。 「愛さんは?」 わたしが聞くと、 「とっくに帰った。あっちも大学生の兄さんがいて、兄さんと帰ってた。だから、俺はお前を迎えにきたんだ」 兄貴はそう言うと、何かおかしかったのか、ぷふふ、と吹き出していた。 速水さんに別れの挨拶、できなかったな。