花火は終わってるのに、胸の鼓動が速すぎて。周り中の何も見えない。
きっと、速水さんを好きになってしまう。
それは「今」か「少し先の未来」か、わたしにはわからない。
わたしはいつか、この人のために涙を流す。
速水さんが戻ってくる気配がしたので、彼にわたしは大声で言う。
「遅いからもう、かえりまーす」
「何言うの。夜道暗いから、送ってくよ。途中まで」
まるで本物の彼氏みたいに、速水さんは言った。
「でも、一人で帰れますからー」
わたしたちがそんなやりとりをしてると、
「お前ら、バカじゃねえの?」
わたしが今、一番聞きたくなかった声が聞こえてくる。兄貴のダミ声が。
兄貴は意外にもとても落ち着いていた。
その様子を見るに、ラムネ瓶を速水さんがかたしに行ってたタイミング辺りで到着していたのだろう、と思った。



