だから、絶対、ダメなのに。
「のど、とてもとても渇いてるんです。やっぱりもらえませんか?」
わたしは速水さんにお願いしてしまう。
速水さんはくつくつと笑う。そして、ラムネ瓶を開けて、ほんの一口だけ口をつけて軽く飲んだ後、わたしにその瓶を差し出してきた。
「あなたは、性格悪いですよね」
わたしはそれだけ、やっとの思いで言って、そのラムネ瓶に口をつけて、中身を飲む。半分だけ飲んだ時に速水さんの顔をチラリと見た。でも、彼が優しくうなずいたので、残りもわたしが飲み干してしまった。
「じゃあ、瓶もらうよ。屋台のおじさんが帰っちまう前にかたそう」
わたしから上品に瓶をまた奪いとり、速水さんは暗闇の中にかけていく。その先では屋台の撤収があらかた終わってる。
いつか、わたし。
いや、もう始まってるのか。



