七夕。ラムネ瓶ごしの片想い



 パァアアア、という音が響き、金色と緑色と赤色の花火が空に打ち上がった。
 
 会場が一瞬だけ、しんとなって。
 そして、誰かの歓声がそこかしこで湧き上がる。
「きれい」
 わたしも上を見上げた。息を呑んで、口にしてた。こんな片田舎の空を彩る芸術を見つめている。
 花火が上がるのはわずか十分間。地元なので、その知識はあった。こんな田舎なんだもの。でも、その十分が、神様がプレゼントしてくれたみたいな時間。
 花火が上がってる。そして、校内の女子が憧れる男子、速水さんの隣にいる。わたし。
 速水さんもずっと空を見てる。その姿をちらりと見てしまう。
 胸がドラムの高速連打のように鳴りっぱなし。

 ラムネの瓶はずっと持っていた。瓶は「汗」をかいていた。でも、口をつけるのが恐れ多くて、結局、飲んでいなかった。
 速水さんもそのことについては何も言ってこなかった。
 夜はしんしんと更けていく。
 夜空に花火が生まれる十分間。終わりの花火がひときわ高く打ち上がるまでの時間。神聖なおごそかな祈りの気持ちをわたしは感じていた。