七夕。ラムネ瓶ごしの片想い


 速水さんは、わたしにそっとハンカチを渡してくれた。紺色の無地のハンカチ。生地が上質でしっかりしてる。折り目通りにピタリと畳まれて、シミひとつないハンカチに、わたしの汗がシミをつけてしまう。

「本当に本当に、申し訳ありません。速水さん」
 わたしは彼の顔を見られずに、ただただ、平謝りした。そして、訳のわからない言葉を続けてしまう。
「ハンカチ、洗ってお返しします。学校の下駄箱にでも、こっそり入れさせてください。本当にご迷惑をかけて申し訳ありません。このご恩は忘れませんから」
「ねえ、よしなよ。赤嶺葉月の妹なのに、ぺこぺこするな」
 今、聞こえたその言葉。速水さんはわたしが葉月兄貴の妹だって知ってる?