でも、帰り道にわたしは気づいた。速水さんのハンカチが、この小さなワインレッドのバッグの中にある気配がした。
わたしが無意識に入れてしまった? それとも速水さんが入れたのかな?
返さなきゃな。きちんと洗濯して、アイロンをかけて、月曜日、下駄箱に入れるんじゃなくて、彼のクラスに行こう。
胸の中に、隠せない想いが生まれてくる。それはなにも、今日が花火大会の夜だったからだけではなくて。
わたしはもっといい夜を、その時はそうと気づかずに過ごしてたんだな。
ラムネ瓶ひとつだけ経た、ファーストキスの夜を。
メニュー