チャラい社長は私が教育して差し上げます!

『舞、何かあったの?』

今は恵子も職場じゃないらしい。

「社長が……グス、社長のヤツが……グス」

『あんた、泣いてるの?』
「だって、だってさ……グス」

『飲みに行きましょう? 話を聞いてあげるから。あ、社長と帰るから無理か』

「今日は電車だから……グス、大丈夫」

『そっか。定時にロビーでいい?』

「うん」


自席に戻り、役員3人に緊急経営会議の招集通知メールを送信した。もちろん、完成したばかりの資料を添付し、cc:に社長を設定して。

そして、定時丁度に職場を出て、私服に着替えて1階のロビーへ行くと、ちょうど恵子もやって来た。

「ごめんね、さっきは取り乱しちゃって」

「いいって。どこ行く?」
「私、今夜はワインをがぶ飲みしたい気分」

「じゃあ、あそこへ行きましょう?」

という事で、私達はワインが激安の、イタリア料理のお店へ行った。


「私、この大きいボトルを頼んじゃう」

「ちょ、それは無理だって」

さすがに私もそう思った。持ち帰るわけにも行かないし。

「じゃあ、この大きい方のデカンタ。それ以上は譲れない」

「もう、しょうがないなあ。赤だよね?」

「うん」
「私は小さい方の白にしようっと」

恵子はオーダー用紙に、商品番号をボールペンですらすらと書いていった。

「お料理は?」
「ん……小エビのサラダとペペロンチーノ」

「サラダ、半分くれる?」
「いいよ」

「じゃあ、私はミラノ風ドリアにしようっと」

店員さんにオーダーし、セルフサービスのおしぼりで手を拭き、コップの水を一口飲むと、

「で、何があったの?」

と恵子が口火を切った。私は、恵子に聞いてほしい事がいっぱい有るような、そうでもないような、つまり頭の中がグチャグチャで、何からどう話すべきか悩んだ。