チャラい社長は私が教育して差し上げます!

「では、私達はこれで失礼させていただきます」

課長がそう言って社長にお辞儀をしたので、私もそれに倣ってペコンとお辞儀をした。そして社長に背を向け、社長室を出ようとしたら、

「悪いんだけど、コーヒーもらえるかな?」

と背後から社長に言われた。すると、課長が素早く私に目配せした。たぶん、『あなたの仕事よ?』という意味だと思い、私はくるっと社長に向き直った。

「かしこまりました。ミルクと砂糖はお入れしますか?」

「うん、アリアリで」

「かしこまりました。少々お待ちください」


ふー。何かどっと疲れた気がする。
まさか、社長がああいう人とは、夢にも思わなかった。

「社長は甘いコーヒーがお好みみたいだから、次回以降は聞かなくていいと思う」

「そうですね」
「ま、せいぜい頑張ってみれば?」
「あ、はい」

課長の言い方は変だけど、あの社長では頷けた。私、前途多難だなあ。