チャラい社長は私が教育して差し上げます!

夕方になり、課長からのレクチャーも一通り終わり、淹れたてのコーヒーを啜っていたら、

「朝倉さん、社長がお戻りになったから、あなたを紹介するわ」

と課長から言われた。私が給湯室にいた時に、社長はお戻りになったらしい。

いよいよだわ。神徳直哉社長がどんな方なのか、それを思ったら胸がドキドキしてきた。

「あなたは、社長を見た事はあるの?」
「ありません」

「そう? 驚いても、顔に出したりしないで、失礼の無いようにしてね?」

「は、はい」

それって、どういう意味なんだろう。何だか、怖くなってきた。

課長がコンコンと社長室のドアをノックすると、中から、

「はい、どうぞー」

という、若い男性の、かつ軽い調子の声が聞こえた。

「失礼します」

と課長は凛々しい声で言い、ドアを開けて社長室の中に入ったので、私も課長に続いて一歩中に入り、「失礼します」と言いながら、ペコンとお辞儀をした。

そして、ゆっくり頭を上げて前を見ると、そこには、おおよそその場には相応しくない、と思われる容姿の人物がいた。