チャラい社長は私が教育して差し上げます！

課長から、グループウェアのレクチャーを受けた。つまり、メールの整理方法や連絡先の整理、スケジュール管理、会議室の予約等々。

その後は、名刺の管理や秘書課のルールなどを教えてもらい、最後に新社長に関する諸々を教えてもらった。それによると……

新社長のお名前は神徳直哉(こうとくなおや)さん。年齢は30歳で、前社長である神徳善造(ぜんぞう)さんのご長男で、お姉さんがいるらしい。

社長就任前のポストは、開発部チーフマネジャー。その業務内容は課長も知らないらしい。

親の七光りとは言え、30歳で社長というのは異例中の異例と思われ、しかも役員未経験なわけで、新社長の神徳直哉さんは、相当に優秀な人なんだろうなと思った。

あ、そうでもないのかな。課長に非常識な”要望”をしたのもその人の訳で、ちょっと変わった人なのかもしれない。

「課長、私は何時に出社すれば良いのでしょうか？」

秘書課の人は、かなり早く出社すると聞いていた。担当する役員が出社する前に、メールの整理やスケジュールの確認。他には会議の資料の確認などをするためらしい。

「そうねえ。１時間前に出社する人が多いけど、あなたの場合はどうかしらね。状況を見て自分で判断してちょうだい」

「わかりました」

慣れた人でも１時間前なら、私はもっと早く出社しなくちゃだわ。取り敢えず明日は、２時間前に出社しようっと。

うちの会社の始業時刻は10時でゆっくり目なんだけど、２時間前だと８時か。厳しいなあ。

聡(さとる)の朝ご飯はどうしよう。自分で何か食べてもらえばいいか。うん、そうしようっと。