チャラい社長は私が教育して差し上げます!

「私は”指名”ではなく、”要望”と言ったはずよ?」

同じようなものだと思うけど、違うのかしら。

「新社長はね、『俺の秘書は、20代の女性にしてくれ』って言ったのよ。その条件を満たすのは、あなただけなの」

呆れた。なんて非常識な人なんだろう。おおよそ大人の発言とは思えない。名前も顔も知らない新社長だけど、私はその人に怒りさえ覚えた。課長が嫌そうな顔をしたのは、もっともだと思う。

「そんな、わ……」
「我儘が許されるのか、って言いたいんでしょ?」

「あ、はい」
「普通は許されないわ。例え社長でもね」

「それって……」
「あなたも、時期に解るから」

そう言われたら、聞けなくなってしまった。何がどう、普通じゃないのかを。

「新社長の就任に関する諸々は、殆ど手配済だし、何かあったら私達が対応するから、あなたは何もしなくていいわ。明日から、通常業務だけしてちょうだい」

「はあ……」

その”通常業務”が、社長を担当するとなると膨大な量で、尚且つミスは許されないと思うわけで、新人の私に務まるとは思えない。

そんな私の不安が顔に出たのか、

「心配しないで、大丈夫だから」

と課長は言ってくれたものの、私は不安を拭えなかった。