チャラい社長は私が教育して差し上げます!

秘書課へ異動した初日。

私は憧れだった濃紺の制服を身にまとい、課長を含めて総勢10名程のメンバーに紹介された。全員女性で、殆どの人が私より年上と思われた。

次に課長の篠崎俊子(しのざきとしこ)さんから、私が担当する役員を告げられたのだけど、何と、それは社長だった。てっきり私は、3人前後の平取を担当するものと思っていたから、びっくりしてしまった。

「そんな大役を、なぜ私のような新人が担うのですか?」

率直な疑問を課長に述べたのだけど、

「新社長のご要望よ」

と、課長はなぜか嫌そうに顔をしかめてそう言った。

ちなみに、”新”社長というのは、うちの会社が大量のリコールを出してしまい、社長と役員数名が引責辞任し、新たに前社長のご子息が社長に就任したからだ。

「なぜ私が指名されたのですか?」

私は平凡な一社員に過ぎず、新社長の事はお名前さえ覚えていない訳で、そんな私が指名されるのは謎でしかなかった。

「あなたを指名したんじゃないの」
「え?」